『最強のふたり』

 片や大富豪の障害者に対し、片やそれを介護する側はスラム出身で前科者の失業者。片や美術やクラシック音楽の愛好家で、片やブラックミュージックファン。片ややや陰性に対し、片や全面陽性。そして片や気むずかしい性格に対し、片やKYというか無神経というか、ざっくばらんな性格。
 このような正反対の二人が出会うとシチュエーションの妙味を狙ったものでしょう。

 映画としても、障害者の介護という暗くなりがちな作品を、きわめて明るくユーモアあふれる描き方をしていました。
 その明るさの原動力は、ドリスのキャラクターとそれを演じたオマール・シーにあるといえます。
 作品に決定的な明るいトーンを与え、作品全体を引っ張った功績は彼にあるといっていいでしょう。

『ダークナイト ライジング』

 現在活躍中の若手映画作家の中でも、クリストファー・ノーランはまちがいなくトップクラスに位置していますが、その新作が公開され前評判も非常に高いので、大いに期待して臨みました。
 とはいうものの、前作『ダークナイト』が非常に完成度の高い傑作であり、同作で悪役のジョーカーを演じたヒース・レジャーが歴史的といっていい名演だったこともあって、その続編を作ることなど非常な困難だろうという想像から、わずかな不安もありました。

 結論をいうと、たしかに本年を代表する傑作であることは間違いありません。
 とはいうものの、『ダークナイト』と比較してしまうと、前作を凌駕するほどパワーある作品だったといえるのかはやや疑問でした。

『ロボット』

 インド以外の映画も含め、久々のバカ映画大作? ということで鑑賞しましたが、ほぼ予想範囲内の面白さと出来映えでした。

 インド映画といえば、1998年に『ムトゥ踊るマハラジャ』を観たのと、それ前後に関連していくつかの公開された作品を観て以来です。
 悪役のロボットと戦う後半部を、前半部とをきれいに切り離してある構成は非常にわかりやすく、また格闘シーンや恋愛など実に巧く絡み合わせていて、まとまりのよい作品に仕上がっています。
 もっとも、後半部はよくあるハリウッドCGI大作映画のパロディという感じなので、前半部に比べてやや減速した感は否めませんでした。

『アーティスト』

 予告編から想像していた通りの、おおよそ予想範囲内の内容でしたが、出来映えは予想以上でした。
 セリフがないという制約にもかかわらず、よくぞこれだけの内容に仕上げたものと感心しました。

 サイレント映画との触れ込みですが、トーキーになる場面が2カ所あり、厳格にいうとパートトーキーといったところでしょうか。
 この2カ所のトーキー化も巧く、作品に対しかなりの効果を収めています。

『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』

 20世紀末のイギリスで11年半間もの間宰相を勤め、毀誉褒貶の激しかった英国初の女性政治家を描いた作品です。
 映画では、在職中の業績に対しおおむね好意的な評価がされていたように感じられましたが、あえて老いて認知症になった現在の視点から描いたのはどのような意図だったのでしょうか。

『ツリー・オブ・ライフ』

 予告編からして実に格調が高いただものではない作品に感じられ、しかもなんとあのテレンス・マリック監督の新作ということで、これこそ今年一番の期待作にちがいないものと予感し、必ず観るものと決めていました。
 テレンス・マリックといえば『シン・レッド・ライン』『ニュー・ワールド』と観てきましたが、北野武の映画にもつながる無常観や、そしてなによりも映像美のすばらしさにいつも堪能してきました。
 しかしながら、今回はどうだったか。

『英国王のスピーチ』

 吃音に悩まされる国王の苦悩と、その矯正を一生懸命手助けする医師とともに克服していく話ですが、なんのケレン味もないストレートなな描き方がされています。
 もしもこの映画が、アカデミー作品賞その他たくさんの映画賞を受賞した作品であることを知らなかったら、地味だがなかなかいい佳作だと感じたことでしょう。
 しかし大賞の受賞作だということを意識して観ると、あまりに大人しすぎる作品(?)であることに首をかしげたくなる作品です。